IFRSで「のれん」定期償却が採用されたら・・
先日、7/19に日経新聞の記事をきっかけに
『投資初心者の方も知っておきたい「のれん」についての基礎知識』
というタイトルで投稿しました。
その中で、会計基準間でのれん償却のルールが違いますと書きました。
日本基準では最長20年での定期償却が必要、一方で欧米の基準では定期償却は不要という内容です。
今回はこの件の補足で、昨年あたりから、IASB(国際的な会計基準を検討する団体、と理解ください)のほうで、
【国際基準でも日本みたいにのれん償却したほうがええかも】となり始め、議論がなされています。
ただ、期間損益への影響がかなり大きいだけに、当然ながら慎重派も多く、議論の行方は不透明、というのが現状のようです。
(参考)6/26日本経済新聞記事
もしIFRSでのれん定期償却が義務付けられることになったら・・
6/26付日経新聞記事によると、多額ののれんを計上する日本企業として、ソフトバンクグループと武田薬品工業の2社が記載されています。
仮にIFRSで日本基準同様の償却ルール(最長20年)が適用された場合の単年度利益に与える影響をざっくり見てみましょう。
社名 | ①のれん金額 | ②単年度償却(①/20) | ③'21/3期税前利益 | ②/③ |
---|---|---|---|---|
ソフトバンクグループ | 4.3 | 0.215 | 2.7 | 8.0% |
武田薬品工業 | 4.1 | 0.205 | 0.16 | 128.1% |
(金額は兆円単位、①は6/26日経新聞記載数値、③は四季報記載数値)
ソフトバンクも業績のブレはかなり大きいんで、'21/3期という一時点だけをとらえたものになるのは必ずしも適切な見え方ではありませんが、それでもまぁソフトバンクはさすがの利益規模ですね。のれん償却を行ったとしても単年度利益への影響は軽微と見えます。
一方、武田薬品。
こちらはシャイアー買収により一気にのれんが膨らんだ格好になっています。
'21/3期時点では単年度利益でのれん償却額をカバーしきれない公算になりますね。
このように、のれん償却の影響度は会社によってはかなりのインパクトを与えることが見込まれます。
影響が大きすぎるので、個人的にはIASBの議論のなかでのれん償却の方向に進む可能性は高くなく、仮に進んだ場合でも、日本のように最長20年ではなくもっと長期での償却を認める落としどころが模索されるのかなという気がします。
いずれにせよ、IASBの議論の状況については引続き注視していきたいと思います。
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